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注目の判例の紹介(危険運転致死傷幇助被告事件)

2016.05.22更新

平成25415日最高裁判例(第三小法廷)は、職場の後輩がアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを認識しながら、自動車を運転することを了解し、その自動車に同乗して後輩の運転を黙認し続けた行為について、危険運転致死傷罪の幇助犯が成立するとしました。

この判例を短くまとめると以下のようになります。

まず、職場の後輩Aが飲酒をし、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態で自動車を運転し、人を死傷させました。これにより、Aには危険運転致死傷罪が成立します。

さらに、本件の被告人はAの先輩であり、すでに数時間にわたってAとともに飲食店で飲酒した後、Aが被告人の意向を確認し、了解を得てAが自動車を運転したのです。

すなわち、被告人は、Aがアルコールの影響により正常な運転が困難な状態であることを認識しつつ、Aが運転することを了解し、Aの運転する自動車に同乗して、それを黙認し続けたのです。

最高裁は、被告人がAに対して自動車の運転を了解したこと、Aの運転を静止することなくそのまま自動車に同乗して運転を黙認し続けたことを理由として、被告人が、Aの運転の意思をより強固なものにし、Aの危険運転致死傷罪を容易にしたことは明らかであると述べ、被告人に危険運転致死傷罪の幇助犯が成立すると判示しました。

 幇助犯とは、自らが直接犯罪を犯さなくても、他人の犯罪を容易にし、促進することにより成立します。

本件では、被告人がAの運転を了解し、かつ、自動車に同乗して運転を黙認し続けたことにより、Aの犯罪を容易にした、と最高裁が判断したのです。

最高裁は、被告人が了解したことが、Aが自動車を運転したことの重要な契機になっていること、被告人がAの自動車に同乗したことを特に重視していると思われます。お酒を飲んで酩酊している知人の運転を許し、さらには自動車に同乗して運転を静止させないことにより、危険運転致死傷罪という重大な犯罪の幇助の罪に問われることになりかねませんから、十分に注意が必要です。